CDプレーヤであればほとんどの機種で内蔵発振子(クロック)を高精度発振器へ交換することが可能です。このページでは、ノーマルの水晶発振子を高精度水晶発振器に交換するための要点を説明します。 |
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ただし、当店ではここに書かれた内容の一切を保証しません。皆様がここに書かれた内容に応じて作業され、誤って機器を破損した場合でも一切責任はとれませんのでご了解願います。 |
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交換の手順は次の通りです。 1 発振子周波数の確認(該当する周波数の発振器をご用意下さい) 2 発振子回路電圧の確認(CDPなどは5V、DVDPでは3.3Vが多い) 3 電源とアース点の確認(発振器用電源をどこからとるか、あるいは100Vから作るか) 4 クロック入力点の確認(どこの点に発振器出力を接続するか) 5 実装スペースの確認(発振器回路基板をどこにつけるか) 発振器の電源は、簡単にすますにはCDPにあるデジタル系の電源から3端子レギュレータで5Vを作ることもできますが、 できれば専用トランスを入れ、交流から分岐して第二世代電源にて作ってやるのがベストです。 以下は第二世代電源で5V電源を作る場合の回路例です。 この回路の出力側の5V-OUTを発振器の電源に接続し、GNDを発振器のGNDと発振器回路のGNDに接続してください。 トランスを追加しないでCDP内部の直流電圧を使う場合は、上記回路図のA-B点より右側の回路だけを作れば 正確な5Vを作ることができます。 以下、順に説明しますが、あくまで一般的な内容で説明します。特殊な発振回路や 特殊な回路構成、特殊な電源回路などの場合には異なるアプローチも必要になります ので、ここに書かれたことが全てではありません。 | |
1.発振子周波数の確認 | |
CDPに実装されている発振子はいろいろな形状のものがあります。 表面積の大きな素子ではそこに周波数がプリントされている場合が多いのでそれを 確認して下さい。その場合、11.2896MHzなどとフルに書かれていること はまれで、[11.28]とか[16.93]などと書かれている場合が多いよう です。いずれにしてもCDPの場合には44.1KHzの整数倍の周波数である はずですので、次のいずれかです。 4.2336MHz 8.4672MHz 11.2896MHz 16.9344MHz 22.5793MHz 33.8688MHz 45.1584MHz 発振器の周波数が読み取れない、書かれていない、などの場合はシンクロで波形を 見るなどしないといけませんが、概ね次のようなことがいえます。 ソニー系は33.8688MHzか45.1585MHz(カレントパルスDAC) が多いです。VRDSやCEC系は16.9344MHz、フィリップス系は 11.2896MHzが多いです。 次の写真は様々なクロック部分の写真です。表面実装や円筒形のもの、代表的なカンタイプのものから 発振子ではなく発振器が付いているものまで様々です。 Clocks |
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2.発振子回路電圧の確認
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発振子の場所がわかったら、その発振子に供給されている電圧が何ボルトか調べます。 上記1.でシンクロを使った場合は波形の波高値から何ボルトかわかりますが、そう でない場合は発振子が接続されている先のデコーダが何ボルト動作のチップであるかを 調べたり、その回路への供給電源のレギュレータが何ボルトかを調べるなどして確認 します。一般的には次のようなことがいえます。 CDP、CDトランスポートはほとんどが5V動作。 DVDPでは、初期の製品は5V、最近のDVDPでは3.3V動作。 テスターがあれば、発振子の周辺にある小さな電解コンデンサやパスコンを探し、 その両端電圧を測れば分かります。ただし、テスターをあてる場合は周辺の端子間を 短絡したりしないよう充分にご注意下さい。テスター棒が長い場合短絡の危険が高く なりますので、先端だけを残してビニールテープを巻き、余分な部分を露出させない などの工夫が役に立ちます。 |
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3.電源とアース点の確認(発振器用電源をどこからとるか)
ここが最大の難関です。よく内容をご理解の上作業して下さい。 |
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3.1 発振子回路のアース 発振子回路のアースは次のような観点で探せば比較的簡単に見つかります。 *発振子の近くに電解コンデンサがあれば、そのマイナス側がアースラインです。 もしそこが、発振子足からパスコンを経て接続されている部分と導通があれば間違いありません。 (発振子の2本の足は、通常どちらもパスコンデンサを介してアースに接続されています:特殊な発振回路の場合は除く) 3.2 クロック用電源の探査 電源トランスを追加する構成の場合はここは読み飛ばしてください CDP内部の直流電源を使う場合は使える電源(8〜16V)を探しますが、これが難関です。 通常、CDプレーヤなどの電源はアナログ回路用、メカ用、デジタル回路用などが1箇所にまとめて配置されている場合が多いのですが、これらの中から間違いなくデジタル回路用電源を探さねばなりません。全てのアースが共通であればアナログ回路用電源からクロック基板用に16Vなどを取り出してもたいして問題にはならないのですが、中にはアナログ、デジタルの各要素ごとに絶縁された電源構成となっていてアース電位が異なる(又は不定の)場合があり、その場合は正しくデジタル回路用 電源からクロック用電源をらないと、(1)発振器が正しく発振しない、(2)再生にノイズが載る・・など異常現象が出ます。 (最悪はアースの電位差により基板上のデコーダを破損してしまう場合もあります) ですから、クロック用電源としては発振子と同じアース電位の高圧側を探すことになりますので、上記3.1で見つけたアース点を基準とし、ここと導通のあるアース電位を持つレギュレータ回路を見つける・・・という手順になります。 レギュレータ回路はほとんどの場合[78××](5Vの場合は7805)や[317T]などの3端子レギュレータが使用されています。これらはヒートシンクを着せられたりして文字が見えにくくなっているものもありますが、端子は次のような構成に なっています。 3端子レギュレータ [78XX]はGND端子がそのままアース点です。 [317T]のADJは抵抗を介してアースに接続されていますし、入出力端子はコンデンサを介してアースに接続されています。 この3端子レギュレータのアース点と上記3.1で見つけておいた発振子アースとの導通を確認し、同じアース電位の3端子レギュレータが見つかればシメタもの、その高圧側端子からクロック用電源を取り出すことができます。、 |
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4.クロック入力点の確認(どこの点に発振器出力を接続するか)
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発振子を外すと2個の穴が開きます。そのどちら側かにクロック出力を接続するのですが、その前に、発振子と共に発振回路を構成していた余分な素子も取り外しておきます。 つまり、通常の発振子は右図のような回路で実装されていますので、この発振子足を短絡している抵抗(R1)とそれぞれの足を接地させている2個のパスコン(C1,C2)も取り外しておきます。 さて、発振子の2本の足は片側がデコーダのXOUTに接続され、もう一方がXINに接続されています。クロックはこのXIN側に入れてやればいいのですが、デコーダチップのデータシートがないとどちら側がXINかということはわかりません。 全てのデコーダのデータシートが公開されているわけではありませんが、データシートが無いとお手上げかというとそうでもありません。 | 代表的クロック回路 |
CDプレーヤやトランスポートはクロックが無い状態で長時間通電されるとサーボ回路が破損してしまい致命的ですが、短時間であれば仮に接続を間違えても壊れることはまずないでしょう(責任は持でませんが)・・・ですから、少々乱暴な手段ではありますが、次のような手順を踏むことでクロック入力点を判別することは可能です。 ※ただし、上記3.までの配線が完了し、正しい周波数でクロックが出力できる状態であることが前提です。 (1) 発振子を外した穴のそれぞれから短い2本の仮配線を立てておく。 (2) どちら側かにクロック出力を繋ぐ。 あくまで仮接続ですのでクロック基板を短絡や接触させないようにご注意下さい。基板まるごとビニールの小袋に入れたりすると効果的です。 (3) CDプレーヤの電源を短時間投入する。 この際、次の異常が出たらすぐに電源を切ります。 * メカの回転が上がり続けて止まらない。 * メカがまったく動作しない。 * メカが異常な音を出している。 これら異常がなく、問題なく動作しているようならCDを入れてみて次の判別をします。 A. CDを正しく認識し、演奏を始められるのであれば現在の点がクロック入力点。 B. 上記の異常が出て電源を切らねばならないのであれば反対側がクロック入力点。 C. どちら側に接続してもメカが正しく動作しないのであれば、クロック回路が正しく出力を出していない。 上記A.でCDを正しく認識できた場合でも、「認識するまでに時間がかかりすぎる」とか「認識するまでに不規則な音がする」などの場合は波形がおかしい場合が想定されます。また、正しいクロック出力が正しい入力点に接続されていても、波形が悪くてきちんと動作しない場合などもあります。 そのようなケースでは本来はシンクロスコープを見ながら波形の調整をしないといけませんので、対策は一概には言えませんが、配線のポイントは、クロック基板からの配線長をできる限り短くすること、また、波形がおかしいと思われる場合はクロック出力に直列に100Ω〜330Ω程度まで(状況による)の抵抗を入れると良くなる場合が多いようです。シンクロが無くてもカット・アンド・トライで波形調整をなさった方もたくさんいらっしゃいます。 いずれにしても「クロック無しで長時間通電しない」ことを守って短絡、感電に注意して作業して下さい。 |
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5.実装スペースの確認(発振器回路基板をどこにつけるか)
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これは上記4.で配線長を決めた時点でどこに置くかもほとんど決定していると思います。 当社製クロック基板には2本のスペーサが付属しており、2個の取り付け穴がありますので、これらを利用して取り付けて下さい。 やり方としては (1)壁に穴を開けてビス止めする、 (2)壁や床にホットボンドで固定する、 (3)既設のビス穴を利用して共締めする・・などの方法があります。 クロック基板を固定し、整線の後再度CDPの動作を確認したら作業完了です。 ここからエージングをお楽しみ下さい。音が安定するまで約100時間かかりますが、その間にも音場がグングン改善されていくのが分かると思います。 |
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補足説明
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発振子と発振器の違い 発振子は、水晶やセラミックなどの発振性素材に端子をつけただけの素子で、それ単品ではクロックを発生させることができず、コンデンサ(C)や抵抗(R)とを組み合わせることで規定のクロックを発生させることのできる素子です。 これに対して発振器は、それらコンデンサや抵抗など周辺の要素を含んだ回路で、電圧をかけるだけで規定の周波数のクロックを発生させることのできる集積回路です。 一般のCDプレーヤに実装されているのは発振子+C+Rです。 高精度発振器はその名の如く、発振器です。 発振器には安定した電源を供給する必要があります。 当店で販売している高精度発振器の最適供給電圧は5Vです。 発振子の外し方 カンタイプの発振子を外す際は、両足部分の半田を半田吸い取り器や半田吸い取り線で吸い取ると簡単に外せます。表面実装タイプの発振子は、全体を暖めないとなかなかうまく外れませんが、サンハヤトから出ているSMD−21(表面実装部品取り外しキット)などを使うと比較的楽に外せます。ただ、いずれにしても少しワット数の大きな(60W以上)半田ごてがあった方が良いです。 |
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